スフィンゴビウム属細菌
(Sphingobium sp. SYK-6(= NBRC 103272))
リグニンは木材に多量に含まれる成分で、自然界に最も豊富に存在する芳香族化合物です。その一方でリグニンを分解することができる生物は限られており、バイオマスとして木質を利用する際にその分解速度の遅さが問題とされています。リグニンの生分解は、キノコなどの白色腐朽菌によって開始され、その結果低分子化されたリグニンは、さらに土壌細菌によって分解されます。Sphingobium sp. SYK-6は、クラフトパルプ工場の廃水から分離された細菌であり、唯一のエネルギー源としてβ-アリールエーテル、ビフェニルやジアリールプロパンなどの様々なリグニン由来芳香族化合物を利用することができます。このことから、本菌はリグニン由来の芳香族化合物の代表的な分解者であると考えられています。
Sphingobium sp. SYK-6のゲノム解析を行った結果、1本の環状染色体(4,199,332 bp、GC含量 65.57 %、3,913 ORFs、50 tRNAs、2 rRNAオペロン)と1本の環状プラスミドpSLGP(148,801 bp、GC含量 64.40 %、150 ORFs)をを持つことが明らかになりました。リグニン由来の芳香族化合物の分解に関与することが知られている遺伝子は、染色体に散在しており、少なくとも10の異なる遺伝子座に位置していました。さらに、さまざまな芳香族化合物の取り込みに関与すると考えられる多くのトランスポーター遺伝子が存在することが分かりました。リグニン分解にかかわる本菌の生活環をうかがい知る一端となる知見であると考えられます。今後のリグニン分解菌の産業利用の促進につながることが期待されます。
Sphingobium sp. SYK-6 電子顕微鏡写真
国立大学法人 長岡技術科学大学 提供
ゲノムサイズ(bps) | 4,348,133 |
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ORF | 4,063 |
GC含量(%) | 65.53 |
データベース | DOGAN |
NBRC番号 | 103272 |
代表共同研究先 | 国立大学法人 長岡技術科学大学 |
References:
- [1] Degradation of 3-O-methylgallate in Sphingomonas paucimobilis SYK-6 by pathways involving protocatechuate 4,5-dioxygenase.
- Kasai D.,Masai E.,Katayama Y.,Fukuda M.(2007)
- FEMS Microbiol. 274:323-8. [PMID:17645527]
- [2] Genetic and biochemical investigations on bacterial catabolic pathways for lignin-derived aromatic compounds. >
- Masai E.,Katayama Y.,Fukuda M.(2007)
- Biosci. Biotechnol. Biochem. 71:1-15 [PMID:17213657]
- [3] Detection and localization of a new enzyme catalyzing the beta-aryl ether cleavage in the soil bacterium (Pseudomonas paucimobilis SYK-6).
- Masai E.,Katayama Y.,Nishikawa S.,Yamasaki M.,Morohoshi N.,Haraguchi T.(1989)
- FEBS Lett. 249:348-52. [PMID:2737293]
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