NBRCニュース 第65号
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NBRCニュース No. 65(2020.10.1)
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NBRCニュース第65号をお届けします。今号は連載「バイテク分析法」にて、NBRC微生物
カクテルの新商品「ヒトmock」をご紹介します。また、生物資源データプラットフォーム
(DBRP)に、民間企業が保有する生物資源のデータが初めて追加されましたので、ご案内
いたします。最後までお読みいただければ幸いです。
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内容
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1.新たにご利用可能となった微生物株
2.バイテク分析法(10)
ヒト常在菌NBRC微生物カクテルの提供に向けて
3.民間企業初!味の素株式会社と株式会社テクノスルガ・ラボの生物資源データを
公開
~未公開であった両社が保有する微生物とその情報を生物資源データプラット
フォームで公開しました~
4.動画で見る微生物取り扱いのコツ
5.NBRCの展示
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1.新たにご利用可能となった微生物株
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◆NBRC株
酵母2株、糸状菌9株、細菌20株、微細藻類1株が新たにご利用可能となりました。
細菌では、ヒトの糞便から分離されたBifidobacterium longum subsp. longum
NBRC 114494を公開しました。本菌株は2.バイテク分析法(10)でご紹介している
「ヒトmock」を構成する菌株の一つでもあります。また、新規生理活性物質nonthmicin産
生菌であるActinomadura sp. NBRC 110471を公開しました。研究開発等で是非ご活用くだ
さい。
【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/nbrc/new_strain/new_dna.html
◆ RD株
第64号の連載「微生物あれこれ」でご紹介した堆肥や土壌から分離した好熱性および高
温耐性糸状菌108株の提供を開始しました。様々な酵素を産生する可能性を秘めたスクリー
ニング源として是非ご活用ください。
【詳細】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/rd/new_rd.html
【RD株リスト】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/rd/available_rd_list.html
【好熱性糸状菌について】
https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/nbrcnews/news_vol64.html#news64_2
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2.バイテク分析法(10)
ヒト常在菌NBRC微生物カクテルの提供に向けて (三浦隆匡)
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日頃よりNBRC微生物カクテル1)をご愛顧いただき誠にありがとうございます。おかげさ
まで、徐々にご利用数が増えてきていると感じております。
NBRCニュース 第56号「バイテク分析法(8)メタゲノム解析における計測レファレンス
の必要性」2)にて、様々な環境から検出される微生物種から幅広い分類群になるように15
種の微生物株を混合したNBRC微生物カクテルの紹介をしました。本号では、特に日本人の
ヒトマイクロバイオーム研究開発を支援するために新たに開発している日本人の常在菌と
して知られる微生物種を中心に混合したカクテル(以下、「ヒトmock」と言う)について
ご紹介します。
ヒトマイクロバイオームとは、ヒトの体に棲息している微生物やその遺伝子などを指し
ます。ヒトの細胞数と遺伝子数はそれぞれ約40兆個/約2万個に対して、ヒトに棲息する微
生物のそれらはそれぞれ100兆個以上/300万個以上と言われています。最新の研究により、
このヒトマイクロバイオームが宿主であるヒトの健康3)やある種の医薬品の効き目4)5)な
どと深い関係があることがわかってきています。今後は医療分野だけでなく、食品開発、
衛生、美容など様々な分野でヒトマイクロバイオームの産業利用が期待されていますが、
そのためにはデータの信頼性保証、結果の再現性、比較互換性が必要です。コホート研究
(※1)などを通じた大規模なヒトマイクロバイオームのビッグデータの活用を促進させ
るためにも比較互換性の確保が求められています。
NBRCでは、この課題を解決するため、NEDO先導研究プログラム/新産業創出新技術先導
研究プログラム「ヒトマイクロバイオーム関連計測の標準基盤整備(平成30年度~令和2
年度)」において、日本マイクロバイオームコンソーシアム(JMBC)、産業技術総合研究
所(AIST)、理化学研究所(RIKEN)と共同で、「ヒトmock」の開発6)を行っています。
「ヒトmock」の特徴は、日本人の糞便、口腔、皮膚の常在菌を中心とした20種類(※2)
の微生物で構成されている点です。これまでのカクテル同様に菌体カクテルとDNAカクテ
ルがあります。
現在、上述のNEDOプロジェクトでは、本「ヒトmock」を使用して、マイクロバイオーム
計測プロトコルの検証と試験室間のデータの誤差をみる室間共同試験が実施されています。
プロジェクト終了後には、推奨プロトコルを含むヒトマイクロバイオーム解析のためのガ
イド文書が公開される予定です。「ヒトmock」についても、プロジェクト終了後に皆様に
も広くお使いいただけるよう、NBRCからの提供を予定しています。詳しい仕様や提供開始
時期につきましては順次、NBRCのホームページやNBRCニュース等にてお知らせいたします。
※1コホート研究
疫学研究の手法のうち、介入を行わず対象者の生活習慣などを調査・観察する「観察研究」
の方法のひとつ7)。
※2「ヒトmock」に含まれる20種類の微生物一覧
Anaerostipes caccae NBRC 114412
Bacillus subtilis subsp. subtilis NBRC 13719
Bifidobacterium longum NBRC 114370
Bifidobacterium longum subsp. longum NBRC 114494
Blautia sp. NBRC 113351(後日、公開予定)
Collinsella aerofaciens NBRC 114504
Cutibacterium acnes subsp. acnes NBRC 113869
Flavonifractor plautii NBRC 113805
Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii NBRC 3202
Megamonas funiformis NBRC 114415(DNA カクテルのみ)
Megasphaera massiliensis NBRC 114414(DNA カクテルのみ)
Ruminococcus gnavus NBRC 114413
Staphylococcus epidermidis NBRC 113846
Streptococcus mutans NBRC 13955
Akkermansia muciniphila NBRC 114322
Bacteroides uniformis NBRC 113350
Clostridium clostridioforme NBRC 113352
Escherichia coli NBRC 3301
Parabacteroides distasonis NBRC 113806
Pseudomonas putida NBRC 14164
1)https://www.nite.go.jp/nbrc/industry/microbiome/cocktail.html
2)https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/others/nbrcnews/news_vol56.html#news56_3
3)Turnbaugh, PJ et al. (2006). Nature. 444, 1027-1031.
4)Routy, B. et al. (2018). Science. 359, 91-97.
5)Gopalakrishnan, V. et al. (2018). Science. 359, 97-103.
6)三浦ら (2020). 日本農芸化学会2020年大会. (トピックス演題に選出)
7)国立がん研究センターがん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/cohort_study.html
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3.民間企業初!味の素株式会社と株式会社テクノスルガ・ラボの生物資源データを
公開
~未公開であった両社が保有する微生物とその情報を生物資源データプラット
フォームで公開しました~
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NBRCでは2019年6月26日から「生物資源データプラットフォーム」(Data and Biological
Resource Platform:DBRP)の運用を開始しています。DBRPは、生物資源とその関連情報
(生物の特性情報、オミックス情報など)を一元的に検索することができるデータプラッ
トフォームです。
これまで、NBRCおよび静岡県、和歌山県の公設試験研究機関が保有する約2万株以上の
微生物に関連した情報を掲載しておりましたが、今年9月から民間企業として初めて、味
の素株式会社、株式会社テクノスルガ・ラボ(50音順)が有する微生物とその関連情報を
DBRPで検索することができるようになりました。両社の情報は、これまで一般には公開さ
れておらず、今回のDBRPでの公開が初めてとなります。
味の素株式会社の情報は、新規医薬リード化合物(※)の創出が期待される水生不完全
菌などの糸状菌や粘液細菌など、合わせて約600株の微生物とその関連情報です。自然界
から分離した菌株や育種株の情報、各々の菌株に関連する文献・特許情報、系統解析用の
遺伝子配列情報など、味の素株式会社の長年の研究の粋を集めた資源と関連情報です。
株式会社テクノスルガ・ラボの情報は、酪酸産生菌に関するものです。ヒトおよび動物
の腸内に生存する酪酸産生菌の多くは、酸素のない条件下でのみ生育可能な細菌(偏性嫌
気性菌)であるため、採取および培養が難しいですが、近年、ヒト腸内において健康状態
を維持する重要な菌として注目されています。株式会社テクノスルガ・ラボが保有する酪
酸産生菌株は、ヒト由来試料から分離された株であり、この度公開した情報には、酪酸産
生菌の概要や、系統解析用の遺伝子配列なども含まれています。
このようにDBRPで公開している情報には、生物資源そのものについての情報のほかに、
生物資源に関連する様々な情報も含まれます。DBRPで公開している情報を事業者の皆様に
広くご利用いただき、新たな価値が見いだされることによって、オープンイノベーション
の創出が加速されることが期待されます。今回、公開した味の素株式会社、株式会社テク
ノスルガ・ラボが保有する微生物株の利用を希望される方は、DBRPに記載されている連絡
先から申し込むことができます。
様々な生物資源の情報をお探しの方は是非ともDBRPをご利用ください。また、保有する
貴重な生物資源の利活用やビジネス機会創出をお考えの方も、DBRPを介した情報提供を積
極的にご活用ください。
※医薬リード化合物
医薬品開発の際に出発点として用いられる生理活性のある化合物
【DBRPトップページ】 https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/top
【コレクション情報などのタグリスト画面】 https://www.nite.go.jp/nbrc/dbrp/taglist
【プレスリリース】※データの見方も掲載しています。
https://www.nite.go.jp/nbrc/information/release/20200914_2_a.html
https://www.nite.go.jp/nbrc/information/release/20200914_1_t.html
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4.動画で見る微生物取り扱いのコツ
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NBRCニュース第64号にて、糸状菌の取扱い方法を解説するYouTube動画の公開について
お知らせいたしましたが、これまでに公開している「L-乾燥標品(ガラスアンプル)の開
封と復元方法」を含む関連動画をまとめたウェブページを開設しました。是非、ご活用く
ださい。
【URL】 https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/support/ampoule.html
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5.NBRCの展示
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NBRCでは以下のイベントに出展いたします。ブースでは皆様からのご相談やご質問にも
お答えいたしますので、是非お立ち寄りください。
BioJapan2020
日時:2020年10月14日(水)~16日(金)
場所:パシフィコ横浜 展示ホール ブース番号:D-2
URL :https://www.ics-expo.jp/biojapan/ja/
北海道ビジネスEXPO
日時:2020年11月5日(木)~6日(金)
場所:アクセスサッポロ
URL :https://www.business-expo.jp/
※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、ご来場の際はマスク着用が必須となります。
以上のURLより開催概要をご確認の上、ご来場ください。なお、BioJapan2020はウェブで
の事前登録が必要となります。
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編集後記
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新型コロナウイルスの影響から自宅でテレワークをされている方も多いと思います。私
もその一人で、2週間に1度出勤するかしないかという、ほぼ外出をしない生活が続いてい
ます。そうなると必然的に毎日の食事はほとんど自宅で。ということになり、炊きたての
ご飯を食べる機会が格段に増しました。やっぱりご飯は炊きたてがおいしいですね。改め
てそのおいしさに感動し、環境が変わることによってこういう気付きもあるのだと妙な感
慨に浸っています。コロナ禍や台風などの災害、環境の変化など色々と大変なことが多く
ありますが、そんななかでも小さな発見があるかもしれませんよ。(SB2)
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・偶数月の1日(休日の場合はその前後)に配信します。第66号は2020年12月1日に配
信予定です。
編集・発行
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)バイオテクノロジーセンター(NBRC)
NBRCニュース編集局([email protected])
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