製品安全

Vol.473 3月25日号 「太陽光発電設備の事故」


 Vol.473 3月25日号 「太陽光発電設備の事故」【PDF:496KB】


 戸建て住宅にお住みの方で太陽光パネルを設置されている方や、新築・改築・新規購入で住宅に太陽光パネル設置を検討されている方は多いと思います。日々の電気代が節約でき、CO2の削減にも寄与できるエコな太陽光発電設備ですが、毎年事故が発生し、近年は事故件数が少し上昇気味です。
 東京都では2025年4月から戸建て住宅を含む新築建物に太陽光パネルの設置を義務づける環境確保条例(※1)が全国に先駆けてスタートするなど、設置に対して推奨の流れが高まってきました。
 今回はNITEに報告された事故事例と併せて、設置時や維持の点で注意して頂きたいポイントをご紹介します。
※1 東京都は、2030年までに都内の温室効果ガス排出量を50%削減する「カーボンハーフ」の実現に向け、再生可能エネルギーの利用拡大を推進しており、この背景のもと、「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の一部を改正する条例」が2022年12月12日に可決成立し、2025年4月から施行されることになりました。
 なお、太陽光パネルの設置義務は、大手ハウスメーカー等が供給する延べ床面積2,000㎡未満の新築住宅などが対象となり、既存の住宅は対象外です。

 

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項目一覧

1. 太陽光発電設備の事故
2. 製品事故収集情報(2月23日~ 3月8日 受付100件)
3. リコール情報 2件
4. その他の製品安全情報
 ・常勤職員(選考採用)募集のご案内
 ・NITE講座の動画を公開しました
  「自家用電気工作物におけるサイバーセキュリティの確保について ~必要となる対策や事例紹介~」
 ・製品事故情報、リコール情報検索ツール「NITE SAFE-Lite」のご案内
 ・消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について
 ・Instagram アカウントのご案内

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1.太陽光発電設備の事故

◆太陽光発電設備について
 戸建て住宅の場合、設備の構成は一般に下記のイメージ図のような構成になります。NITE製品安全センターに報告された事故は、図中の、太陽電池モジュール(太陽光パネル)、接続箱、パワーコンディショナ、配線系(茶色部の配線:パワーコンディショナから太陽電池モジュール間)に関する事案になります。




〇設備各部の働き
・太陽電池モジュール(太陽光パネル)
 太陽の光を電気(直流電気)に変換します。
・接続箱
 屋根に複数枚設置される太陽電池モジュールの各配線を1系統に集約して、パワーコンディショナに太陽電池モジュールで発生した電気を送ります。
・パワーコンディショナ
 太陽光で発電された電気(直流電気)を商用電源と同じ交流電力に変換し、ブレーカーを通してAC100Vを家屋内に流します。余剰電力を電力会社に売電するための制御もここで行われます。
 屋内設置タイプと、屋外設置タイプがあります。

 
◆事故の実情
 NITEが受け付けた製品事故情報において、2014年度から2023年度までの10年間に太陽光発電設備の事故は約200件起きています。設備ごとの発生の内訳では、パワーコンディショナが約7割、太陽電池モジュールが2割弱、その他の設備約1割となります。
 パワーコンディショナの場合、施工不良に起因するものを除けば、設置環境(温度、湿度、水分、ほこり)などの要因による基板などのトラッキング現象による発煙が多く見られます。
 太陽電池モジュールの場合、飛来物などの外的な要因でパネルが破損して通電異常から発熱し、太陽電池モジュール裏の端子ボックスから、配線系、接続箱が影響を受け発火延焼しています。

 

◆事故事例
【事故事例.1】
 パワーコンディショナから発煙する火災が発生しました。(2022年 東京都 拡大被害)
→メイン基板でトラッキング現象が生じ、焼損したと推測されます。脱衣所の壁に設置されていましたが、取扱説明書及び据付工事説明書には、「高温、多湿、ほこりの多い脱衣所などに設置しない。」旨、記載し注意を促していました。
 
【事故事例.2】
 太陽電池モジュールを焼損する火災が発生しました。(2020年 兵庫県 製品破損)
→飛来物の衝突等による外部からの衝撃によって、表面の強化ガラスや内部の太陽電池セルが損傷したこと及び、発電できないセルを迂回するためのバイパスダイオードが故障していたことで、損傷した電池セルが発電時に迂回されずに通電されて焼損し、火災になったものと推定されます。
 
【事故事例.3】
 太陽電池モジュールから屋根の防水シート及び野地板を延焼する火災が発生しました。(2022年 岡山県 製品破損)
→太陽電池モジュール設置台のレールにケーブルが挟み込まれたことでケーブルが損傷し異常発熱して出火したと推測されます。今回の製品では発電状況を遠隔監視するサービスが付与されていましたが、約4年前から異常の兆候が見られたものの、施工店がマニュアルに定めてある保守点検をしていませんでした。
 
◆気を付けるポイント
①パワーコンディショナ、接続箱など
・屋外設置タイプの場合、設置している場所が雨や砂塵の侵入や、虫の侵入などを受けやすい状態になっていないか周囲の環境に注意を払いましょう。
・可能な範囲で機器の外観異常や異音・異臭がないかチェックしましょう。
・新規導入の場合、屋外設置、屋内設置ともに、雨や水分、湿気ホコリの多い場所に設置されないように施工業者との事前の打ち合わせの際に確認しましょう。
 
②太陽電池モジュール
・発電モニターの電力量をこまめにチェックしましょう。前年同月の発電量と比較することで事故の前触れを察知できる場合があります。また台風などが来て、飛来物などによりパネルに損傷が出た場合でも、その後の発電電力量が大きく変わっていた場合、異常の可能性があるので、販売店・工務店・メーカーに相談しましょう。
 
③定期点検について
 設置後1年目、その後は住宅用では4年に1度の定期点検が推奨されています(※2)。点検項目は、設置後の年数やその間の使用・故障状況により異なります。販売店・工務店・メーカーなど専門業者に相談してください。
※2 点検については、一般社団法人 太陽光発電協会(JPEA)で紹介されています。(住宅用システム >長く使っていただくために)をご参照ください。
 https://www.jpea.gr.jp/house/longuser/
 
④製品寿命について
 太陽電池モジュールは20年以上、パワーコンディショナは10~15年と言われています(※3)。太陽電池モジュールと同じ寿命感覚で、パワーコンディショナなどの設備を長期使用していると、基板や電子部品などの劣化から事故の発生率も高くなります。交換時期には注意が必要です。
※3 JPEA のホームページ  FAQ から引用
 https://www.jpea.gr.jp/faq/583/
 
 
■東京都の太陽光パネルの設置についての改正条例は、東京都庁環境局のホームページ「制度改正に関する情報」に詳細が載せられています。ご参照ください。
 https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/solar_portal/program

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2.製品事故収集情報

◆◆◇    消費生活用製品の事故情報収集状況    ◇◆◆
(2月23日~ 3月8日 受付100件)
     NITEに通知のあった事故情報から、件数の多い製品を掲載します。
========================================================       
製品名                 (事故状況と件数)
 
1. ACアダプター         ( 破損等 31件 )
2. 洗面化粧台           ( 破損等  9件 )
3. モバイルバッテリー       ( 火災等  4件 )
3. 電気ストーブ・ファンヒーター  ( 火災等  4件 )
3. 石油ストーブ・ファンヒーター  ( 火災等  4件 )
3. 電動アシスト自転車       ( 火災等  4件 )
========================================================
 ACアダプターは、全てDCプラグが溶融したというもので同じ事業者の事故です。
 洗面化粧台は、全てキャビネットが落下したというもので同じ事業者の事故です。


◇最新事故情報(これまでの受付情報もご確認いただけます)
 https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/information/index.html
 
■事故情報の提供をお願いいたします。
 事故の再発防止のため、有効に活用させていただきます。
 https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/shushu/index.html
 

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3.リコール情報

◆Zebra Japan株式会社(法人番号:5120001165296)
「玩具」 2025/03/12(HP)
【詳細】https://blog.jp.flyingtiger.com/news/zebrajapan-flyingtigercopenhagen-1741339085258-apparelcloud.news-fd587e3f-4d7b-4017-96d6-823191fb62e4
 
◆株式会社マキタ(法人番号:2180301013342)
「充電式電動工具」 2025/03/13(HP)
【詳細】https://www.makita.co.jp/news/detail/gp180d.php

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4.その他の製品安全情報

◆◆◇ 常勤職員(選考採用)募集のご案内 ◇◆◆
 
 現在、NITE製品安全センターでは、製品事故調査及びリスクアセスメント業務の常勤職員(選考採用)の募集をしています。詳細については以下をご確認ください。
 
○製品事故調査業務(中国語が堪能な方)
 https://www.nite.go.jp/data/000156907.pdf
○製品事故調査業務
 https://www.nite.go.jp/data/000156908.pdf
○製品リスクアセスメント業務
 https://www.nite.go.jp/data/000156909.pdf
※採用内定者が確定した場合早期に募集を終了することがあります。
 
【選考採用職員の募集一覧ページ】
 https://www.nite.go.jp/nite/saiyou/senkou/index.html
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◆◆◇  NITE講座の動画を公開しました ◇◆◆
自家用電気工作物における「サイバーセキュリティの確保」について
 
 NITE国際評価技術本部 電力安全センターでは、R6年度NITE講座「自家用電気工作物における「サイバーセキュリティの確保」について~必要となる対策や事例紹介~」をNITEの公式YouTubeチャンネルに公開しました。
 
 国内では数十万以上の電気工作物がありますが、法律改正に伴い、サイバーセキュリティの確保も必要となりました。NITEでは、電気事業法に基づく立入検査を行う機関として、特にこれまでサイバーセキュリティになじみのなかった自家用電気工作物の設置者に向けて、必要な対策や事例を動画で紹介しています。
 
【講座名】
 自家用電気工作物における「サイバーセキュリティの確保」について
 ~必要となる対策や事例紹介~
【講座動画URL】https://www.youtube.com/watch?v=jnon5i8__pU
【対象者】こんな方々にオススメです。
     ・自家用工作物の設置者の方や保安に携わる方
     ・今後関わる予定がある方
     ・本講座にご興味のある方
 
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◆◆◇  「NITE SAFE-Lite」のご案内 ◇◆◆
NITE は、より安心・安全な社会になることを目指して、製品安全に関する情報を発信しており、NITE のウェブサイトで、製品事故の調査結果、リコール情報や誤使用に関する注意喚起などを提供しています。その中で、製品事故情報をどなたでも簡単にウェブ検索できるシステムとして、「NITE SAFE-Lite」というサービスを提供しています。
 
「NITE SAFE-Lite」は、サービス開始以来、多くの方にご活用いただいています。スマートフォンの小さな画面とタッチ操作に配慮したシンプルな操作性で、6 万件にも及ぶ製品事故情報を専門用語(例えば「異音」)でなく普段お使いの言葉(例えば「ガラガラ」)で検索できます。
 
「NITE SAFE-Lite」で製品事故を検索すると、同じ現象の事故だけではなく、よく似た事故情報も表示されます。これにより、様々な視点から事故となる危険性やその場合の被害状況などが「見える化」され、事故の未然防止につながります。
 
令和6年4月1日、「SAFE-Lite」は「事故情報検索データベース」と「リコールデータベース」を統合し、「NITE SAFE-Lite」となりました。
 
【NITE SAFE-Lite】
https://safe-lite.nite.go.jp/
 
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       ◆◆◇ 消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について ◇◆◆
 
                                    消費者庁
 
  消費者庁は、消費生活用製品安全法第35条第1項の規定に基づき報告
  のあった重大製品事故について、以下のとおり公表しています。
 
03/21   5件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250321_01.pdf
03/18 14件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250318_01.pdf
03/14 22件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250314_01.pdf
03/11 14件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250311_01.pdf
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◆◆◇ Instagram アカウントのご案内 ◇◆◆
 
 NITEでは、公式アカウントを開設しています。
 インスタグラムでも、シーズンに合わせて、皆様の生活の安全を守るためにどんどん発信していきますので、フォローやいいねをお待ちしております!
 
 Instagramアカウント→@nite_japan

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編集後記

 今回は、東京都で4月から施行される環境確保条例に併せたテーマとして、太陽光パネル(太陽光発電設備)の事故についての紹介をさせて頂きましたが、東京都の環境確保条例に求められる内容は、太陽光パネルの設置義務だけではありません。電気自動車充電設備等の設置義務なども盛り込まれています。普通充電用の配線を住宅の駐車場に設置することを義務化してV2Hと呼ばれる仕様の充電機器などの設置を促すそうです。
 さて、日本における一般的な電気自動車(EV)の急速充電規格にCHAdeMO(チャデモ)というのがあります。この名称の由来が、「(車の充電中に)お茶でも」、 から「チャデモ」とされていること、ご存じですか。規格の名称の由来としては何ともおちゃめですよね。

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図