製品安全

Vol.472 3月11日号 「ガストーチの事故」


 Vol.472 3月11日号 「ガストーチの事故」【PDF:1.42MB】


 調理やアウトドアで便利なガスバーナー(いわゆる「ガストーチ」)ですが、粗悪な製品(主に海外製)での事故が多く発生しています。このような事故を防ぐため、2025年2月6日から新たにガストーチが「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」の規制対象となりました。しかし、すでに購入済みの製品や、1年間の経過措置期間中に流通している製品の中には、安全性が劣っているおそれのある製品も存在していることから、まだまだ事故については注意が必要です。
 12月24日のVOL.467でも取り上げたばかりですが、今回改めておさらいの意味で、ガストーチの事故と、事故を防ぐために注意すべきポイントをご紹介します。
 

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項目一覧

1. ガストーチの事故
2. 製品事故収集情報(2月9日~ 2月22日 受付48件)
3. リコール情報 5件
4. その他の製品安全情報
 ・常勤職員(選考採用)募集のご案内
 ・動画編集が可能な非常勤職員募集のご案内(製品安全の広報業務)
 ・製品事故情報、リコール情報検索ツール「NITE SAFE-Lite」のご案内
 ・消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について
 ・Instagram アカウントのご案内

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1.ガストーチの事故

◆事故の実情
 NITEが受け付けた製品事故情報において、2019年度から2023年度までの5年間にガストーチの事故は約130件ありました。これらの事故にはリコールの対象製品であったものも多く含まれています。
ガス漏れを防ぐために設けられたO(オー)リング(環状のゴムパッキン)の不良や、ボンベの取付けに起因した製品側の不具合が最も多く、またこれらは生産国が海外のものばかりでした。(生産国不明の事故事案を除く)
 
◆事故事例
【事故事例.1】
 ガストーチを使用中、周辺を焼損する火災が発生しました。(2022年 愛知県 年齢・性別不明 拡大被害)
→カセットボンベ接続部のOリングが収縮してガスが漏れた、Oリングの設計不良が原因の事故と推定されます。この製品は海外からの輸入品で、設計不良からリコールの対象品でした。
 
【事故事例.2】
 ガストーチに他社製のカセットボンベを接続して使用しようとしたところ、ガストーチ及び周辺を焼損する火災が発生しました。(2019年 兵庫県 40歳代・男性 拡大被害)
→火力調節ダイヤル内部のOリングに異物 が挟まっていました。当該箇所に生じた隙間からガスが漏れ、点火した際に引火したものと推定されます。この製品は海外からの輸入品で、品質管理に問題があったものでした。
 
【事故事例.3】
 ガストーチを使用中、当該製品から出火する火災が発生しました。(2023年 東京都 年齢・性別不明 製品破損)
→ガスボンベ取付け部の固定ねじに締め付け不良があったため、取付け部に隙間が生じてガスが漏れ、バーナーの火が引火して火災に至ったものと推定されます。この製品は海外からの輸入品で、製造不良によるリコールの対象品でした。
 
【事故事例.4】
 ガストーチに他社製のカセットボンベを接続して使用中、ガストーチ及び周辺を焼損する火災が発生しました。(2020年 滋賀県 30歳代・男性 軽傷)
→ガストーチ自体には異常はありませんでしたが、取扱説明書の不備で、傾けて使用することに関する注意警告表示が記載されていなかったため、使用者が下向きや上向き等にして使用してしまい、異常燃焼からカセットボンベが過熱されて破裂に至る事故が起きたものと推定されます。製品は海外からの輸入品でした。
 
◆気を付けるポイント
○「購入時」に気を付けるポイント
⑴製品に◇PS  LPGのマーク表示があるか確認しましょう。
 2025年2月6日から、製造・輸入事業者としての国への届け出の義務が生じ、国が認定した登録検査機関で行う技術基準の確認を経たガストーチには、「◇PS LPGマーク表示」が付与されます。1年間(2025年2月6日~2026年2月5日)の経過措置が設けられた後に、2026年2月6日以降からこのマークの表示がない製品は、販売が禁止されます。
 ◇PS LPG マークの近くに、製造・輸入事業者名と国に登録された検査機関名(略称や登録商標の場合もあります)が表示されているかもご確認ください。
 経過措置が取られる間、市場では「◇PS LPGマーク表示」の「あるもの」と、「ないもの」が混在して販売されることになります。
 購入にあたっては、できるだけ◇PS LPGマークまたはJIA認証マーク(※1)が表示された製品の購入を推奨します。もし、これらのマークがない製品を購入する場合は、次に紹介するポイント(2)を特に注意してください。



※1 一般財団法人日本ガス機器検査協会(JIA)独自の検査基準に基づいた認証制度。ガストーチによる事故の実態を踏まえ、業界団体では2020年11月にJIA認証(自主基準)を策定し、安全を担保する取り組みを開始していました。この基準に適合した製品にはJIAマークが表示されています。
 
⑵信頼できるメーカー・販売元かどうか確認しましょう。
 製品の不具合が関係する事故の約半数が、製造・輸入事業者が不明です。特にインターネットでの購入では、事業者に問い合わせようとしても連絡先が不明な場合があります。
 品質管理や購入者への対応をしっかり行う事業者は、製品に責任を持つ者としてその名称や連絡先を明確にしているはずです。製品を選ぶ際には、事業者の国内の連絡先が明記されているかご確認ください。
 また、通常は、メーカーにおいて、ガストーチと指定のカセットボンベ等を装着した状態で安全に使用できるか考慮され、設計や品質管理が行われています。装着するカセットボンベ等が指定されていないガストーチは、そのような確認がされていないおそれがあります。その他、商品説明文などで日本語表記がおかしいもの、日本語の取扱説明書がないもの、他の製品と比較して極端に安価なものは注意が必要です。
 
⑶リコール情報を確認しましょう。
 購入を検討中の製品や、お持ちの製品がリコール対象になっていないか確認しましょう。毎号でご案内している  「NITE SAFE-Lite」 で、リコール情報を検索できます。ぜひご活用ください。
 https://safe-lite.nite.go.jp/

 もしリコールの対象となっている製品をお持ちの場合は、不具合が生じていなくても直ちに使用を中止し、お買い求めの販売店や製造・輸入事業者に確認や相談をしてください。そのまま使い続けないようにしてください。
 
○「使用時」に気を付けるポイント
⑴使用前に製品の点検を行い、異音や異臭などの異常がないか確認しましょう。
 事故の原因の多くはガス漏れによるものです。中には、使用前に異変に気付きながらも使ってしまい、事故に繋がってしまっている事例もあります。使用する前に以下のとおり必ず点検を行い、ガス漏れが生じていないか確認してください。

①カセットボンベ等を装着する前に、接続部やバーナー部に異物が付着していないかを確認する。
②火の元から離れた場所でカセットボンベ等を装着し、ボンベがガストーチに確実に固定されていることを確認する。
   

③ガスの漏れる音(「シュー」という異音)やガスの臭い(異臭)がしないかを確認する。
   
 装着後に異音や異臭などがある場合、ガスが漏れているおそれがあります。直ちに使用を中止してください。
 なお、基本的にガストーチ及び接続するカセットボンベ等は、組み合わせが指定されています。それぞれの製品の取扱説明書や本体表示に記載されている注意事項を確認し、指定された製品同士の組み合わせで使用するようにしてください。
 
⑵点火はカセットボンベ等を立てた状態で行いましょう。
 大きく傾けて異常燃焼が生じた場合、直ちに立てた状態に戻しましょう。
 ガストーチには、カセットボンベ等を大きく傾けたり、逆さにしたりしても使用できるタイプの製品と、使用できないタイプの製品があります。大きく傾けて使用できないタイプの製品を傾けすぎると、異常燃焼が生じて大きく燃え上がるため、やけどなどのおそれがあります。
 適切な製品には、それぞれのタイプに応じた注意事項が取扱説明書に記載されていますので、取扱説明書を確認してください。もし、使用中に傾けて異常燃焼が生じた場合は、直ちにカセットボンベ等を立てた状態に戻してください。また、どちらのタイプの製品であっても点火する際に傾けていると異常燃焼が生じるおそれがあるため、点火はカセットボンベ等を立てた状態で行ってください。



 なお、大きく傾けたまま長時間使用し続けるとバーナー部などが熱で損傷するおそれがあります。取扱説明書に指示がある場合を除き、使用中の傾ける角度は45度までを目安としてください。


 
【参考資料】
(1) ◇PS LPGマークが適用されるガストーチの定義(※2)
 携帯液化石油ガス用バーナー(液化石油ガスを充塡した容器が直接取り付けられる構造のものに限り、当該容器との接続部から火炎を出す位置までの距離が三十五センチメートル以上のもの及び当該容器(液化石油ガスの吸収材の使用その他の液化石油ガスの漏えいを防止するための加工がされているものに限る。)との接続部がねじ式のものを除く。)

※2 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行令 第三条(液化石油ガス器具等)の別表第一(第三条関係)の十三及び、別表第二(第四条関係)の八 に規定されています。
 
(2) ◇PS LPGマークが適用されるガストーチで技術基準化された主な内容(※3)
・Oリング等のシール材、パッキン類、弁、ダイヤフラムは、液化石油ガスや熱による影響に耐えること。
・気密試験に耐えること。
・液化石油ガスを気化する機能を有すること。
・反復使用に耐えうる耐久性を有すること。
 (器具栓・点火装置で3,000回、ボンベ接合部で1,000回の使用に耐えること、など)
・取扱説明書があり、技術基準に定められた使用上の注意点が記載されていること。

※3 液化石油ガス器具等の技術上の基準等に関する省令 別表第3(第11条、第13条関係)に示す性能を満たす技術的内容の例 「携帯液化石油ガス用バーナー」の技術基準から抜粋しました。
 
■NITEでは、2月27日に注意喚起として『 事故原因の7割が製品に問題 ~ガス“漏れ”バーナーに新たな規制~』をプレスリリースしています。今回ご紹介したガストーチの事故の詳しい分析結果を掲載しています。ぜひご覧ください。
 https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2024fy/prs250227.html

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2.製品事故収集情報

◆◆◇    消費生活用製品の事故情報収集状況    ◇◆◆
(2月9日~ 2月22日 受付48件)
     NITEに通知のあった事故情報から、件数の多い製品を掲載します。
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製品名                 (事故状況と件数)
 
1. 石油ストーブ・ファンヒーター      ( 火災等   6件 )
2. 電気暖房器(電気ストーブ、毛布)    ( 火災等   4件 )
3. モバイルバッテリー           ( 火災等   3件 )
4. エアコン                ( 火災等   2件 )
4. 照明器具                ( 火災等   2件 )
4. 脚立・踏み台              ( 破損等   2件 )
4. 靴                   ( 転倒負傷等 2件 )
========================================================

◇最新事故情報(これまでの受付情報もご確認いただけます)
 https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/information/index.html
 
■事故情報の提供をお願いいたします。
 事故の再発防止のため、有効に活用させていただきます。
 https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/shushu/index.html
 

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3.リコール情報

◆ローランド株式会社(法人番号:6080401010213)
「ACアダプター(楽器用)」 2025/02/21(HP)
【詳細】https://www.roland.com/jp/support/support_news/2502210900
 
◆株式会社ロストアロー(法人番号:6030001069217)
「雪崩ビーコン」 2025/02/21(HP)
【詳細】https://www.lostarrow.co.jp/info/notice/NT20250221_BD_ReconLT_Recall.html
 
◆EcoFlow Technology Japan株式会社(法人番号:1010401145409)
「ポータブル電源」 2025/02/25(HP)
【詳細】https://www.ecoflow.com/jp/efdelta-recall-and-replacement
 
◆株式会社フタバ(法人番号:6180001043446)
「自転車(フロントフォーク)」 2025/02/26(HP)
【詳細】https://e-ftb.co.jp/news/12272/
 
◆PMI WW Brands, LLC d/b/a Stanley 1913
「水筒(ステンレス製)」 2025/02/28(HP)
【詳細】https://www.stanley1913tmrecallint.expertinquiry.com/

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4.その他の製品安全情報

◆◆◇ 常勤職員(選考採用)募集のご案内 ◇◆◆
 
 現在、NITE製品安全センターでは、製品事故調査及びリスクアセスメント業務の常勤職員(選考採用)の募集をしています。詳細については以下をご確認ください。
 
○製品事故調査業務(中国語が堪能な方)
 https://www.nite.go.jp/data/000156907.pdf
○製品事故調査業務
 https://www.nite.go.jp/data/000156908.pdf
○製品リスクアセスメント業務
 https://www.nite.go.jp/data/000156909.pdf
※採用内定者が確定した場合早期に募集を終了することがあります。
 
【選考採用職員の募集一覧ページ】
 https://www.nite.go.jp/nite/saiyou/senkou/index.html
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◆◆◇ 動画編集が可能な非常勤職員募集のご案内(製品安全の広報業務) ◇◆◆
 
 現在、NITE製品安全センター製品安全広報課では、動画編集が可能な非常勤職員の募集をしています。詳細については以下をご確認ください。
 
○製品安全の広報業務(動画編集が可能な方)
 https://www.nite.go.jp/data/000156762.pdf
 ※業務内容欄に記載の動画編集ソフト等は参考例となります。気になる点がございましたらお気軽にお問い合わせください。
  
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◆◆◇  「NITE SAFE-Lite」のご案内 ◇◆◆
NITE は、より安心・安全な社会になることを目指して、製品安全に関する情報を発信しており、NITE のウェブサイトで、製品事故の調査結果、リコール情報や誤使用に関する注意喚起などを提供しています。その中で、製品事故情報をどなたでも簡単にウェブ検索できるシステムとして、「NITE SAFE-Lite」というサービスを提供しています。
 
「NITE SAFE-Lite」は、サービス開始以来、多くの方にご活用いただいています。スマートフォンの小さな画面とタッチ操作に配慮したシンプルな操作性で、6 万件にも及ぶ製品事故情報を専門用語(例えば「異音」)でなく普段お使いの言葉(例えば「ガラガラ」)で検索できます。
 
「NITE SAFE-Lite」で製品事故を検索すると、同じ現象の事故だけではなく、よく似た事故情報も表示されます。これにより、様々な視点から事故となる危険性やその場合の被害状況などが「見える化」され、事故の未然防止につながります。
 
令和6年4月1日、「SAFE-Lite」は「事故情報検索データベース」と「リコールデータベース」を統合し、「NITE SAFE-Lite」となりました。
 
【NITE SAFE-Lite】
https://safe-lite.nite.go.jp/
 
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       ◆◆◇ 消費生活用製品の重大製品事故に係る公表について ◇◆◆
 
                                    消費者庁
 
  消費者庁は、消費生活用製品安全法第35条第1項の規定に基づき報告
  のあった重大製品事故について、以下のとおり公表しています。
 
03/07 17件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250307_01.pdf
03/04 17件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250304_01.pdf
02/28 12件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250228_01.pdf
02/26 07件
https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms202_250226_01.pdf
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◆◆◇ Instagram アカウントのご案内 ◇◆◆
 
 NITEでは、公式アカウントを開設しています。
 インスタグラムでも、シーズンに合わせて、皆様の生活の安全を守るためにどんどん発信していきますので、フォローやいいねをお待ちしております!
 
 Instagramアカウント→@nite_japan

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編集後記

 10年以上も昔のことですが(編)は以前、中国広東省にある中国家電メーカーの安全性評価施設で、樹脂の燃焼試験(UL94 V-0難燃性評価試験)の装置を借りて試験をしたことがあります。
 驚いたことに供給ガスにカセットボンベ缶が使われているではありませんか。たしかUL94の試験などでは供給されるガスの成分、流量が厳しく規定化されていたはずなのですが…。また当時から流量計はものすごく高価だったはず…。
試験後、結果の妥当性について疑問も少し残りましたがそれよりも、「こんな分野にまでカセットボンベ缶が使われているのか。」と驚いたことを今でも覚えています。

お問い合わせ

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター  製品安全広報課
TEL:06-6612-2066  FAX:06-6612-1617
住所:〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-22-16 地図