化学物質管理

化審法(平成15年改正法)-判定・通知

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判定・通知(第4条)

化審法(平成15年改正法)では、通知のカテゴリが6通りに分かれています。

1.第1種特定化学物質 ;第1項第1号
  • 難分解性
  • 高濃縮性
  • 長期毒性(人)又は生態毒性(生活環境動植物)あり
2.第2種監視化学物質のうち生態毒性(生活環境動植物)なし;第1項第2号
  • 難分解性
  • 高蓄積性でない
  • 長期毒性(人)に該当する疑い(該当するものも含む)あり
  • 生態毒性(生活環境動植物)なし
3.第3種監視化学物質 ;第1項3号
  • 難分解性
  • 高蓄積性でない
  • 長期毒性(人)に該当する疑いなし
  • 生態毒性(生活環境動植物)あり
4.第2種監視化学物質のうち生態毒性(生活環境動植物)あり ;第1項4号
  • 難分解性
  • 高蓄積性でない
  • 長期毒性(人)に該当する疑い(該当するものも含む)あり
  • 生態毒性(生活環境動植物)あり
    ※第2種監視化学物質、第3種監視化学物質は遅滞なく指定 ;第5,6項
5.白物質 ;第1項5号
6.判定不能(不明、保留) ;第1項第6号
※第2種監視化学物質、第3種監視化学物質及び白物質を判断する場合、生態毒性(生活環境動植物)のデータが必須とされ、当該データが無い場合(いわゆる判定不能・不明・保留の場合)は、届出者にデータを要求することが可能。

監視化学物質への該当性の判定等に係る試験方法及び判定基準

最終改正 平成18年7月21日

  • 厚生労働省医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室
  • 経済産業省製造産業局化学物質管理課化学物質安全室
  • 環境省総合環境政策局環境保健部企画課化学物質審査室

化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づく化学物質の審査に係る厚生労働省、経済産業省及び環境省の関係審議会を合同で開催するに当たり、第一種監視化学物質、第二種監視化学物質及び第三種監視化学物質への該当性の判定を行うために必要とされる試験の試験成績に係る現在の判定基準等について、下記のとおりとする。
下記の基準を基本としつつ、関係審議会における専門的知見に基づく意見を踏まえ、各監視化学物質への該当性の判定を行うこととする。

Ⅰ.試験方法
  1. (1)新規化学物質及び既存化学物質が監視化学物質に該当するかどうかの判断は、当該新規化学物質及び既存化学物質について既に得られている知見の他、「新規化学物質に係る試験並びに第一種監視化学物質及び第二種監視化学物質に係る有害性の調査の項目等を定める省令」第2条第1項から第3項まで及び第2条の2の規定による以下の試験の試験成績に基づき行うものとされている。
    • ①微生物等による化学物質の分解度試験(分解度試験)
    • ②魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験(濃縮度試験)又は1-オクタノールと水との間の分配係数測定試験(Pow測定試験)
    • ③ほ乳類を用いる28日間の反復投与毒性試験(28日間反復投与毒性試験)又はほ乳類を用いる90日間の反復投与毒性試験(90日間反復投与毒性試験)
    • ④細菌を用いる復帰突然変異試験及びほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験又はマウスリンフォーマTK試験(変異原性試験)
      (以下、③及び④を「スクリーニング毒性に関する試験」という。)
    • ⑤藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験及び魚類急性毒性試験(生態毒性試験)
  2. (2)これらの試験は、原則として「新規化学物質等に係る試験の方法について(平成15年11月21日薬食発第1121002号・平成15・11・13製局第2号・環保企発第031121002号)」(以下「通知」という。)に沿って実施することとされているが、通知に定められていない試験方法(OECDテストガイドライン等)に基づく試験成績については、上記(1)の試験方法と同等の取扱いが可能であると考えられ当該試験成績の信頼性が確保されていると認められる場合には、判定の際に用いることとしている。
Ⅱ.試験成績に係る判定基準

上記Ⅰ.(1)に掲げる試験の試験成績に基づき判定を行う場合には、原則として以下の基準によることとしている。

(1) 分解度試験
①良分解性
  • 3つの試験容器のうち2つ以上でBODによる分解度が60%以上であり、かつ3つの平均が60%以上であること。
    :あわせてHPLC、GC等の直接分析法により分解生成物が生成していないことが確認されること。
    :なお、通知で定められた試験方法による試験成績が上記の基準を満たさない場合であって、BOD曲線等から試験終了後も引き続き生分解していることが示唆される場合(上昇傾向等)には、OECDテストガイドライン302Cによる試験成績に基づいて判定を行うことができる。
②難分解性
  • 良分解性でないこと。
(2) 濃縮度試験又はPow測定試験
①高濃縮性
  • 濃縮倍率が5000倍以上であること。
②高濃縮性でない

以下のいずれかであること。

  • 濃縮倍率が1000倍未満であること。
  • 1-オクタノール/水分配係数(Pow)の対数が3.5未満であること。ただし、界面活性のある物質、分子量分布を有する混合物、有機金属化合物、純度の低い物質(HPLC法を除く)及び無機化合物には適用しない。
③濃縮倍率が1000倍以上、5000倍未満の場合には、必要に応じ、以下の成績を考慮して高濃縮性かどうかを総合的に判断する。
  • 排泄試験
  • 部位別(可食部)の濃縮倍率

なお、上記の判定に当たっては、原則として、定常状態における濃縮倍率を用いることとし、定常状態での数値が得られない場合には、総合的に判断をする。また、濃縮倍率に濃度依存性が認められる場合には、必要に応じてより低濃度区での試験を行い、その成績を踏まえ判断する。

(3) スクリーニング毒性に関する試験
①細菌を用いる復帰突然変異試験

a) 陽性

  • いずれかの試験系で溶媒対照の2倍を超えて復帰変異誘発コロニー数が増加し、その作用に再現性又は用量依存性が認められること。
  • 比活性値が概ね1000rev/mg以上である場合には、原則として、強い陽性と判断する。
  • 陽性の場合にあって、再現性や用量依存性に乏しい場合等には、原則として、軽微な陽性と判断する。

b) 陰性

  • 陽性でないこと。
②ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験又はマウスリンフォーマTK試験

a) ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験

[1]陽性

  • 染色体異常を持つ細胞の出現率が陰性対照に比べ概ね10%以上であり、その作用に再現性又は用量依存性が認められること。
  • 20値が10-2mg/ml以下である場合には、原則として、強い陽性と判断する。
  • 陽性の場合にあって、再現性や用量依存性に乏しい場合等、又は概ね50%あるいはそれ以上の細胞増殖阻害が起こる濃度でのみの陽性反応等は、原則として、軽微な陽性と判断する。

[2]陰性

  • 陽性でないこと。

b) マウスリンフォーマTK試験

[1]陽性

  • いずれかの試験系で突然変異頻度が統計学的に有意な増加を示し、その作用に再現性又は用量依存性が認められること。
  • いずれかの試験系で突然変異頻度が陰性対照の4倍、又は陰性対照より400×10-6を超えて増加している場合には、原則として、強い陽性と判断する。
  • 陽性の場合にあって、再現性や用量依存性に乏しい場合、若しくは突然変異頻度が陰性対照の2倍未満である場合等、又は概ね80%あるいはそれ以上の細胞毒性が認められる濃度でのみの陽性反応等は、原則として、軽微な陽性と判断する。

[2]陰性

  • 陽性でないこと。
③28日間反復投与毒性試験(以下、OECDテストガイドライン422で定められた方法に準じて実施された試験を含む。)又は90日間反復投与毒性試験
  1. a) NOEL及び発現した毒性の程度から以下の3段階に分類する。

[1]

  • NOELが概ね25mg/kg/day未満のもの(NOELの推定根拠において非特異的な変化等、毒性学的に軽微な変化のみが発現した場合を除く。)
  • NOELが概ね25mg/kg/day以上250mg/kg/day未満のものであって、NOELの推定根拠又はその他の発現した毒性において、神経行動毒性や重篤な病理組織学的な変化等、毒性学的に重要な変化(回復期の影響については、b)A又はBに該当するものとする。)が発現したもの。

[2]

  • NOELが概ね250mg/kg/day未満のもの([1]に該当するものを除く。)

[3]

  • NOELが概ね250mg/kg/day以上のもの。

なお、90日間反復投与毒性試験においては、28日間反復投与毒性試験に比べて投与期間が長いこと等を考慮しつつ、判断することとする。

  1. b) 回復試験中に見られる影響の程度から以下の3段階に分類する。なお、分類に当たっては、可逆性の程度、回復期における毒性の残存状況、遅発毒性の有無、組織学的変化に起因する生化学的な変化かどうか等を考慮する。
  1. A:回復試験期間内に回復しない病理組織学的な変化を生じさせるもの、又は遅発毒性を生じさせるもの
  2. B:回復試験期間内に回復しない生化学的な変化を生じさせるもの
  3. C:回復試験の期間において回復する、又は回復途上であることが示される可逆的変化
(4) 生態毒性試験
藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験及び魚類急性毒性試験の結果から以下の3段階に分類する。
(藻類生長阻害試験に基づく毒性値は、原則として速度法により算出したものを用いる。以下同じ。)
  1. [1]:3種の試験結果から得られるL(E)C50値の最小値が概ね1mg/l以下のもの。
  2. [2]:3種の試験結果から得られるL(E)C50値の最小値が概ね1mg/l超、10mg/l以下のもの。([1]に該当する場合を除く。)
  3. [3]:3種の試験結果から得られるL(E)C50値の最小値が概ね10mg/l超のもの。
(5) 第一種監視化学物質の判定
既存化学物質について、(1)が難分解性であり、(2)が高濃縮性であると判断された場合であって、人及び高次捕食動物への長期毒性を有することがいずれも明らかでない場合には第一種監視化学物質として判定する。
(6) 第二種監視化学物質の判定
(1)が難分解性であり、(2)が高濃縮性ではないと判断された場合であって、(3)の結果、次のいずれかに該当する場合には第二種監視化学物質として判定する。>
  1. ①28日間反復投与毒性試験又は90日間反復投与毒性試験(以下「反復投与毒性試験等」という。)において強い毒性が示唆されるもの
    ((3)③[1]に該当する場合)
  2. ②変異原性試験において強い陽性が示唆されるもの
    ((3)①又は②が強い陽性の場合)
  3. ③反復投与毒性試験等において中程度の毒性を示すとともに、変異原性試験で強い陽性ではないものの陽性であるもの
    ((3)③[2]に分類され、かつ、(3)①又は②が陽性(但し、軽微な陽性である場合を除く。)の場合)

ただし、通知に規定する慢性毒性試験、生殖能及び後世代に及ぼす影響に関する試験、催奇形性試験、変異原性試験(小核試験等)、がん原性試験、生体内運命に関する試験、薬理学的試験又はこれらと試験の目的が合致している試験において、死亡、がん、長期にわたる障害、生殖能又は後世代の発生に及ぼす影響その他これらに準じて毒性学的に重要な影響が認められた知見がある場合には、必要に応じ、これらの試験成績を考慮して第二種監視化学物質に該当するか判定する。

(7) 第三種監視化学物質の判定
(1)が難分解性であり、第一種特定化学物質ではないと判断された場合、以下の[1]、[2]びいずれかより第三種監視化学物質に該当する場合には、第三種監視化学物質として判定する。
[1](4)の結果から以下のように判定する。
  1. ①3種の試験結果から得られるL(E)C50値の最小値が概ね1mg/l以下である場合((4)[1]に該当する場合)には、第三種監視化学物質として判定する。
  2. ②3種の試験結果から得られるL(E)C50値の最小値が概ね1mg/l超、10mg/l以下である場合((4)[2]に該当する場合)には、以下のとおり判断する。なお、下記a)~c)に複数該当する場合であって、第三種監視化学物質に該当するかの判定が分かれた場合においては、第三種監視化学物質として判定する。
    1. a)魚類急性毒性試験の結果が該当する場合には、第三種監視化学物質として判定する。
    2. b)ミジンコ急性遊泳阻害試験の結果が該当する場合には、物質の化学構造等を考慮して個別に判断する。
    3. c)藻類生長阻害試験の結果が該当する場合には、以下のように安定する。
      (i)  EC50の値が1mg/l超、2mg/l以下である場合には、第三種監視化学物質として判定する。
      (ii) EC50の値が2mg/l超、10mg/l以下である場合には、第三種監視化学物質として判定しない。
  3. ③3種の試験結果から得られるL(E)C50値の最小値が概ね10mg/l超である場合((4)[3]に該当する場合)には、第三種監視化学物質とは判定しない。
  1. [2]「第三種監視化学物質に係る有害性調査のための試験の方法について(平成16年3月25日平成16・3・19製局第6号・環保企発第040325004号)」に定める藻類生長阻害試験、ミジンコ繁殖試験又は魚類初期生活段階毒性試験の試験結果において、少なくとも、NOECが0.1mg/L以下となる場合には第三種監視化学物質として判定する。また、これらの試験以外の水生生物に対する慢性毒性を示唆する試験結果が得られた場合には、個別に判断する。

なお、上記に基づき判定が困難な物質については、類似の物質の評価及び判定の例を参考にしつつ、安全側に立脚した観点から判定する。

Ⅲ.高分子フロースキームに基づく判定

高分子フロースキームに基づき判定を行う場合には、原則として以下の基準によることとしている。

(1)以下の安定性試験の結果及び溶解性試験の結果に係る基準を満たす場合には、難分解性であり、かつ、高濃縮性ではないと判定する。
①安定性試験
  • 重量変化の基準
    :試験前後で変化がないこと(2%以下の変化は変化とは見なさない)。
  • DOC変化の基準
    :試験前後で変化がないこと(5ppm以下の変化は変化とは見なさない)。
  • IRスペクトルの基準
    :試験前後で変化がないこと。
  • 分子量変化の基準
    :試験前後で変化がないこと。
②溶解性試験
  1. a)以下の9種類の溶媒のいずれにも溶けない場合であって、特定の構造特性(架橋構造、高結晶性等)を有するか、又は酸・アルカリに不溶であること。
    • n-オクタノール、n-ヘプタン
    • トルエン、1,2-ジクロロエタン、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン(THF)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジメチルホルムアミド(DMF)
  2. b)上記a)以外の場合は、分子量1000未満の成分含有量が1%以下であること。

なお、上記①及び②の基準を満たさない場合には、分解性試験、濃縮度試験、スクリーニング毒性に関する試験、生態毒性試験の試験成績に基づき判定を行う。

(2)Ⅲ.(1)①及び②の基準を満たす場合には、以下のとおり判定を行う。
  1. a)重金属を含まず、化学構造と長期毒性との関連性に関する知見等から判断して人への長期毒性を有することが示唆されない場合には、第二種監視化学物質に該当しないと判定する。
  2. b)a)以外の場合には、スクリーニング毒性に関する試験の試験成績に基づき第二種監視化学物質への該当性の判定を行う。c)以下のいずれかの場合には、第三種監視化学物質に該当しないと判定する。
  3. c)以下のいずれかの場合には、第三種監視化学物質に該当しないと判定する。
    1. (ⅰ)重金属を含まず、水、酸及びアルカリに対する溶解性が確認されない場合であって、次のいずれかに該当する場合
      • 水への自己分散性*が確認されない場合
      • 水への自己分散性が確認された場合であって、カチオン性を示さない場合

      ※分散剤を含まない条件下で分散する性状を有するもの

    2. (ⅱ)重金属を含まず、水、酸及びアルカリに対する溶解性が確認された場合にカチオン性を示さないものであって、化学構造と動植物への毒性との関連性に関する知見等から判断して、動植物の生息又は生育に支障を及ぼすおそれを有すると示唆されない場合
  4. d)c)以外の場合には、生態毒性試験の試験成績に基づき第三種監視化学物質への該当性の判定を行う。
「監視化学物質(指定化学物質)への該当性の判定等に係る試験方法及び判定基準」の改正履歴
制定:平成15年4月18日
改正:平成16年4月30日
(指定化学物質から監視化学物質への名称変更、生態毒性試験の追加、第一種監視化学物質及び第三種監視化学物質の判定基準の追加)
改正:平成16年6月18日
(Pow測定試験における判定基準を3.0未満から3.5未満に変更及びPow測定試験における除外規定を追加)
改正:平成17年1月14日
(高分子フロースキームに基づく第三種監視化学物質判定基準において水への自己分散性が確認された場合の基準を追加及びPow測定試験にHPLC法を採用したことに伴う変更を追記)
改正:平成17年6月24日
(マウスリンフォーマTK試験、90日間反復投与毒性試験及び慢性毒性試験等の記載を追加)
改正:平成17年9月30日
(第三種監視化学物質において3種生物における生態毒性試験の判定基準及び水生生物に対する慢性毒性における判定基準の記載を追記)
改正:平成18年7月21日
(第三種監視化学物質判定基準中の藻類生長阻害試験に関し、毒性値の計算に原則として速度法を用いることを追記及び判定基準を変更)

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